発生学、生殖系器官形成、細胞増殖因子研究の例 (教授より一言!No.3)マウス外生殖器原基(生殖結節)にみられる伸長制御メカニズム:BMP signalingの機能解析 (以下本文は細胞工学2004年2月号に掲載しました。転載のご許可もいただきました) Regulation of outgrowth and apoptosis for the terminal appendage: external
genitalia development by concerted actions of BMP signaling 我々が解析している外生殖器は、四肢と同様付属肢に属し、また交接器官として発達した器官である。Hox遺伝子は外生殖器と四肢の両方の伸長過程に重要であり、外生殖器と四肢の形成過程にはある程度共通の分子メカニズムが存在すると考えられている。一方、Fgf10ノックアウトマウスでは四肢は伸長が起こらず形成されないが1)、外生殖器は伸長には大きな異常は無く尿道形成に異常を示す2)。このことは発生制御遺伝子には器官特有の機能、または発生プログラムのコンテクストにより異なる役割があることを示唆していると思われる。近年、四肢の形成分子メカニズムは着実に解明されつつあるが、外生殖器形成の分子メカニズムはほとんどわかっていない。
外生殖器形成過程には他の器官形成(四肢原基など)において重要である細胞増殖因子群が発現している(図2)。Shhは尿道上皮の遠位-近位にかけて発現しており、Fgf8は遠位尿道上皮に限局して発現する。Fgf8の遠位尿道上皮の発現は、生殖結節が隆起する直前の胎生10.5日目から著しい生殖結節の隆起が見られる胎生14.0まで発現している。このFgf8が発現している領域を除去すると間葉性因子の発現が低下すると共に、生殖結節の伸長は著しく抑えられる2)。我々はFgf8が発現する領域をDistal Urethral Epithelium (DUE)と呼び、生殖結節伸長過程の際DUEとその周辺の間葉との相互作用が重要であると考えている2) 3)。このDUEに注目し遺伝子発現解析を行ってきた結果、幾つかの遺伝子がDUEおよびDUE周辺の間葉に発現していることが明らかとなった。BMP signaling分子はその1つである(図2)。今回我々は、器官培養系およびノックアウトマウスの解析により、外生殖器伸長過程におけるBMP signalingの機能の一端を明らかにした5)。
DUEおよびDUE周辺では一過的にapoptosisが起こっている4)。BMPタンパク添加培地で生殖結節を器官培養すると生殖結節の伸長は著しく阻害され、遠位部に見られるapoptosisは亢進し、逆にBMPのantagonistであるNOGGINによりこのapoptosisは抑制されることがわかった5)。近年、WNT familyの1つWnt5aのノックアウトマウスは、四肢や鰓弓をはじめ外生殖器の伸長が著しく低下することが報告された6)。またShhノックアウトマウスの生殖結節は隆起せず、Fgf8の発現が著しく低下していることから、Shh、Fgf8は外生殖器の伸長を正に制御する因子であると考えられる4)。BMP4タンパクを過剰投与するとWnt5aやDUEに発現するFgf8の発現は低下し、さらに生殖結節間葉の細胞増殖も顕著に低下していた。これらの結果は、生殖結節の伸長過程においてBMP signalingはFgf8,Wnt5aの発現を抑制すると共に細胞増殖、細胞死の両方を制御しうる可能性を示唆している。実際にNogginノックアウトマウスの生殖結節はFgf8、Wnt5aの発現および細胞増殖が低下しており、著しい伸長阻害を示した(図3)。さらに我々は、DUE近傍の上皮に特異的に発現するCre遺伝子(Brn4-Cre strain)を用いてBMPの特異的な受容体であるBmprIAのコンディショナルノックアウトマウス(BmprIA CKO)の解析を行った。BmprIA CKOの生殖結節は、Fgf8の発現の上昇およびapoptosisの減少が観察され、Noggin KOとは対照的に外生殖器遠位部の形成肥大が起こっていた(図3)。
以上の結果から外生殖器形成過程の際、apoptosisと細胞増殖のバランスは極めて重要であり、また生殖結節伸長過程においていわば正の制御因子群であるfgf8およびShhは、Bmp4
の発現を誘導する2) 4)ことからも、negative growth regulatorsとpositive growth regulatorsの発現を調整することで、生殖結節の伸長はうまく制御されていると考えられる。 謝辞 当研究室では現在、若い、やる気に満ちた大学院生およびポスドクの方を募集中です。 参考文献
1) Sekine K, et al: Nat Genet (1999) 21(1): 138-141 2) Haraguchi R, et al: Development (2000) 127(11): 2471-2479 3) Ogino Y, et al: Ann N Y Acad Sci (2001) 948: 13-31 4) Haraguchi R, et al: Development (2001) 128(21): 4241-4250 5) Suzuki K, et al: Development (2003) 130(25): 6209-6220 6) Yamaguchi TP, et al: Development (1999) 126(6): 1211-1223 |