精子の融解
材料
- 過排卵処理した雌マウス
- FERTIUP®-精子前培養培地(九動株式会社 fertiup(at)kyudo.co.jp)
- CARD MEDIUM(九動株式会社 fertiup(at)kyudo.co.jp)
- mHTF
- チップ(Pipette Tip Cat.No.114 Quality Scientific Plastics)
- ディッシュ(コーニング 35mm X 10mm Cat.No.430588)
- ストロー操作用シリンジ
- 恒温水槽(37°C)
- 精子融解用フロート
- オートピペッター(GILSON PIPETMAN P-10 P-20)
- CO2インキュベーター(37°C 5% CO2 95% air)
- ハサミ
- キムタオル
方法
精子融解用フロートの作製
1 50mL遠沈管と発泡スチロールを下図のように組み合わせ、精子融解に用いるフロートを作製する。融解前の準備
1 恒温水槽を準備する(37°C)。2 精子融解用フロートの中に37°Cの温水を満たし、恒温水槽に、下図のように浮かべてセットする。
3 精子を融解する30分前に、精子前培養用ディッシュ(90µLのFERTIUP®-精子前培養培地ドロップ1個)を作製し、インキュベーター内に静置しておく。
4 採卵10分前に、受精用ディッシュ(90µLのCARD MEDIUMドロップ1個)を作製し、インキュベータ内に静置しておく。
*体外受精にどのような精子を用いるかで、CARD MEDIUMの調整方法が異なる。取扱説明書を参照すること。
5 卵子洗浄用ディッシュ(80µLのmHTFドロップ4個)を作製し、インキュベーター内で30分以上静置しておく。
卵子の採取
1 過排卵処理を施した雌マウスをhCG投与15~17時間後に安楽死させ、採卵した卵子塊を、受精用ディッシュのCARD MEDIUMドロップに導入する(1ドロップあたり2~3匹分の卵子塊)。*安楽死から、卵管を採取・卵子塊を受精用CARD MEDIUMドロップに導入するまでの操作は、極力短時間で行う(30秒以内)。
**1人で行う場合は、一度に複数の雌を安楽死させるのではなく、1匹ずつ安楽死させ、すばやく採卵する。
2 採卵後、受精用ディッシュをCO2インキュベーター内に静置し、30~60分間培養する。
精子の融解
1 ピンセットを用いて、液体窒素保管器からストローを取り出し、空気中で5秒間保持し、37°C恒温水槽中のフロート内に素早く移し、10分間加温する。ポイント:確実に37°Cで加温するために、凍結精子の部分を下方に向けて、ストローを精子融解用フロートへ入れる。
ポイント:凍結・融解したマウス精子は、おかれている周囲の環境の変化に弱いので、精子が動き出す前に粘性が高い精子保存液から粘性の低い培地(FERTIUP®-精子前培養培地)に移すと、融解後の運動性が十分に回復しない。融解したマウス精子は、5分以上37°Cで加温すると動き出すため、必ずストローを10分間37°Cの温水中に静置した後、精子懸濁液を前培養用培地(FERTIUP®-精子前培養培地)に移す。
2 加温後、ストローを37°C恒温水槽中から取りだし、ストロー表面の水分をキムタオルでふき取る。
[液体窒素から取り出して 加温するまで]
精子懸濁液の取り出しと前培養
1 ストローのmHTFとシール部分の間をカットする(ストロー操作用シリンジの内筒を、あらかじめ引いておく)。2 カットしたストローを、ストロー操作用シリンジに差し込む。
3 ストローをストロー操作用シリンジに差し込むと、ストロー内の圧力が高くなるので、その圧力を抜くため、三方活栓のコックを一回転させる。
4 コックを上に戻し、精子懸濁液とシール部分の間をカットする。
5 シリンジの内筒をゆっくり押して、精子懸濁液のみを精子前培養用ディッシュのドロップに導入する。
6 5の精子前培養用ディッシュをインキュベーターに入れ、30分間前培養を行う。
ポイント:精子が前培養培地へ十分に泳ぎ出すまで、精子前培養用ディッシュは、インキュベーター内へ入れて静置しておく。精子が十分動き出す前にディッシュを揺すったりすると、精子の運動性が回復しない場合があるので、注意する。
[精子懸濁液の取り出しと前培養]
媒精
1 チップ(Pipette Tip Cat.No.114 Quality Scientific Plastics)を用いて、前培養した精子懸濁液10µLを吸引し、卵子を含む受精用ディッシュのCARD MEDIUMドロップに添加する(媒精)。2 媒精が終了した受精用ディッシュをインキュベーター内にもどして培養する。
[媒精]
ポイント:媒精に用いる精子懸濁液は、良好な精子が集まる前培養液ドロップの辺縁から採取する(下図参照)。
ポイント:精子懸濁液の採取は、1ドロップから3~4回の実施が可能である。
ポイント:精子懸濁液を卵子塊に吹きかけるように、受精用ディッシュのドロップに添加する。
ポイント:精子懸濁液の採取は、1ドロップから3~4回の実施が可能である。
ポイント:精子懸濁液を卵子塊に吹きかけるように、受精用ディッシュのドロップに添加する。
3 媒精から3時間後、形態的に正常な卵子のみを卵子洗浄用ディッシュのmHTFドロップ(a→b→c)で洗浄する。
*洗浄時に透明帯表面に多数の精子が付着している場合は、チップを装着したオートピペッター(20µL)を用いて、受精用ディッシュ内のCARD MEDIUMドロップを20~30回ピペッティングした後、卵子の洗浄を行う。
**洗浄の際は、極力、CARD MEDIUMを卵子洗浄用ディッシュのドロップに持ち込まないように注意する。
4 媒精から約6時間後、卵子をよく観察し、単為発生卵と判定されたもの(卵細胞質内に1つの前核のみが認められるもの)を取り除き、翌日まで培養する。
5 翌日、卵子洗浄用ディッシュの残りのドロップに2細胞期へ発生した胚のみを移し(d)、胚数をカウント後、移植あるいは凍結保存に用いる。
更新履歴
- 新規 : 2011.05.11
- 更新 : 2013.11.06 媒精から6時間後に、単為発生卵の除去を行う事を明記。
- 更新 : 2014.01.15 CARD MEDIUM内に卵子を採取した後、インキュベータ内で培養する時間を30-60分と明記。それに伴い、作業順番を 卵子採取→精子融解→媒精へ変更。旧ページ。